新井歯科クリニックBLOG
2022年03月10日
抜歯と宣告された歯でも保存できるかも?エクストルージョンを歯科医が解説

今回はエクストルージョン、日本語で矯正的挺出術を解説していきます。簡単にいうと、矯正の考えた方を応用して歯を上に引っ張り出して歯の長さを増やすことです。なぜこの治療が必要なのかを含め、説明していきたいと思います。

①差し歯を長持ちさせるための条件

差し歯(かぶせもの)がはずれて、何回つけてもすぐ取れる、といったご相談を受けることがよくあります。そんな時に口腔内を観察してみると、ほとんどのケースで残りの歯質が少ない状態になっています。実はかぶせものを長持ちさせる重要な要素の一つに、残りの歯の量(残存歯質)があります。この残存歯質がなければ、差し歯という言葉通り残りの歯根に土台が突き刺さっている状態でくっついているので外れやすくなるのです。

すぐ取れる差し歯の状態

図1:写真の歯質はほとんど歯茎から出ていませんので、
このままだとすぐ取れる差し歯をいれることになります

では、どれくらいの歯質が必要でしょうか?諸説いろいろな論文があるのですが、一般的には歯茎の上に歯質が最低でも1.5mmでている必要があります。そして、特に上顎では歯の内側(舌側)に歯質が残っていることが重要になります。少ない残存歯質をどのように増やせばよいでしょうか?

②歯質を増やす2つの方法

少ない歯質を増やすには

  • ・歯茎を切って出ている歯質を増やす(歯冠長延長術=クラウンレングスニング)
  • ・歯を引っ張り出してでている歯質を増やす(矯正的挺出術=エクストルージョン)

の2種類があります。今回はエクストルージョンについて説明します。
方法としては、歯を引っ張り上げるためにハンガーフックのようなワイヤーを少ない歯質側に取り付けます。そして、それを上方に引き上げるためのワイヤーを取り付けて準備完了です。あとはゴムをかけてゴムの力で引っ張り上げます。

エクストルージョンのフックとワイヤーをつける場面

図2:フックとワイヤーをつけたところ
エクストルージョンのゴムをかける場面

図3:ゴムをかけたところ
1週間から10日に1回ゴムを交換することを繰り返す
歯肉を切除し、縫合した状態

図4:引っ張り上げた後、歯肉を切除して縫合した状態
かなり歯質が出ているのがわかる
歯肉を切除し、縫合した状態

図5:白い土台をつけた状態
茶色いところが引っ張り上げた歯質
歯肉を切除し、縫合した状態(舌側)

図6:図5の舌側

③エクストルージョンの治療期間

1週間から10日の割合でゴムを交換することを3〜5回ほど繰り返します。その後、後戻りしないように1ヶ月ほど保定しますので、引っ張り上げるのに合計2ヶ月ほど時間がかかります。ただし、後戻りの心配のないケースでは1ヶ月で終わることもよくあります。引っ張り上げた後は、歯肉も一緒について上がってくるためその歯肉を切除する必要があります。

④エクストルージョンのメリット・デメリット

メリットは、歯質が増えることで外れにくい被せ物ができることです。歯質が少ない歯にセラミックを入れるのであれば、すこしでも長持ちさせたいので必須の治療になります。また、歯質が少なすぎて抜歯と言われた歯もエクストルージョンをすることで抜歯を回避できることもあります。
デメリットがあるとすれば、歯根が短くなることです。骨から引っ張り出すので、当然埋まっている歯根が短くなります。つまり、短い歯根の歯には適応できません。

⑤エクストルージョンの費用

矯正力を使っているので保険適応外の治療になります。当院では1本につき5万円+消費税をいただいております。

まとめ

エクストルージョンは残存歯質の少ない歯にはとても有効な治療法です。抜歯を宣告された歯でも保存可能なこともあるので、一度ご相談ください。

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虫歯になりにくい人となりやすい人の違いとは?
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今回はエクストルージョン、日本語で矯正的挺出術を解説していきます。簡単にいうと、矯正の考えた方を応用して歯を上に引っ張り出して歯の長さを増やすことです。なぜこの治療が必要なのかを含め、説明していきたいと思います。

①差し歯を長持ちさせるための条件

差し歯(かぶせもの)がはずれて、何回つけてもすぐ取れる、といったご相談を受けることがよくあります。そんな時に口腔内を観察してみると、ほとんどのケースで残りの歯質が少ない状態になっています。実はかぶせものを長持ちさせる重要な要素の一つに、残りの歯の量(残存歯質)があります。この残存歯質がなければ、差し歯という言葉通り残りの歯根に土台が突き刺さっている状態でくっついているので外れやすくなるのです。

すぐ取れる差し歯の状態

図1:写真の歯質はほとんど歯茎から出ていませんので、
このままだとすぐ取れる差し歯をいれることになります

では、どれくらいの歯質が必要でしょうか?諸説いろいろな論文があるのですが、一般的には歯茎の上に歯質が最低でも1.5mmでている必要があります。そして、特に上顎では歯の内側(舌側)に歯質が残っていることが重要になります。少ない残存歯質をどのように増やせばよいでしょうか?

②歯質を増やす2つの方法

少ない歯質を増やすには

  • ・歯茎を切って出ている歯質を増やす(歯冠長延長術=クラウンレングスニング)
  • ・歯を引っ張り出してでている歯質を増やす(矯正的挺出術=エクストルージョン)

の2種類があります。今回はエクストルージョンについて説明します。
方法としては、歯を引っ張り上げるためにハンガーフックのようなワイヤーを少ない歯質側に取り付けます。そして、それを上方に引き上げるためのワイヤーを取り付けて準備完了です。あとはゴムをかけてゴムの力で引っ張り上げます。

エクストルージョンのフックとワイヤーをつける場面

図2:フックとワイヤーをつけたところ
エクストルージョンのゴムをかける場面

図3:ゴムをかけたところ
1週間から10日に1回ゴムを交換することを繰り返す
歯肉を切除し、縫合した状態

図4:引っ張り上げた後、歯肉を切除して縫合した状態
かなり歯質が出ているのがわかる
歯肉を切除し、縫合した状態

図5:白い土台をつけた状態
茶色いところが引っ張り上げた歯質
歯肉を切除し、縫合した状態(舌側)

図6:図5の舌側

③エクストルージョンの治療期間

1週間から10日の割合でゴムを交換することを3〜5回ほど繰り返します。その後、後戻りしないように1ヶ月ほど保定しますので、引っ張り上げるのに合計2ヶ月ほど時間がかかります。ただし、後戻りの心配のないケースでは1ヶ月で終わることもよくあります。引っ張り上げた後は、歯肉も一緒について上がってくるためその歯肉を切除する必要があります。

④エクストルージョンのメリット・デメリット

メリットは、歯質が増えることで外れにくい被せ物ができることです。歯質が少ない歯にセラミックを入れるのであれば、すこしでも長持ちさせたいので必須の治療になります。また、歯質が少なすぎて抜歯と言われた歯もエクストルージョンをすることで抜歯を回避できることもあります。
デメリットがあるとすれば、歯根が短くなることです。骨から引っ張り出すので、当然埋まっている歯根が短くなります。つまり、短い歯根の歯には適応できません。

⑤エクストルージョンの費用

矯正力を使っているので保険適応外の治療になります。当院では1本につき5万円+消費税をいただいております。

まとめ

エクストルージョンは残存歯質の少ない歯にはとても有効な治療法です。抜歯を宣告された歯でも保存可能なこともあるので、一度ご相談ください。

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